療育事例
こばとっこくらぶでの療育を通じてお子さまの成長につながった、ご家族への助言を通じてお悩みごとが解消・軽減したという事例をいくつかご紹介いたします。
「ご家族の方へ」のページでも触れていますが、言葉の育ちにはリズムとイントネーションも大切になります。
それらの点も留意しつつ、具体的にやり取りを発展させていく方法をいくつかご紹介します。
【盛り上げエコラリア】
家を作るためには様々な材料がたくさん必要です。材料がたくさんないと、いい家が建ちません。だから発語においても、材料(音)をたくさん揃えるためには色々な音が出せるようにする必要があります。この材料(音)をたくさん揃えるために、子どもの発語を上手に真似ます。発語の少ない子どもの発音数を増やす技法として、【逆模倣】という方法があります。例えば、子どもが「アウアウ」と言ったら、驚かさない程度の大きさで、なるべく同じように「アウアウ」と返してあげてみるという方法です。うまく聞き取れなかった言葉を言ったときは、「なんて言ったの?」などと聞き返したりしてはいけません。発音や正確さよりも、もっともっと伝えたいという気持ちが、子どものスキルアップの一番の秘訣になるからです。
子どもの発語を真似するとき、驚かせるような大きな声では子どもは声を出しませんし、小さすぎても伝わりません。リズミカルさ、柔らかさ、声の大きさ等を意識しながら楽しい感じで、さらに子どもが思わずまた何か言いたくなるような雰囲気の中で真似をしてみるのがコツです。
この逆模倣に楽しい雰囲気をプラスした【盛り上げエコラリア】は、子どもが声を出す頻度とレパートリーを上げていきます。
【身体接触遊びを取り入れる】
タカイタカイやくすぐりなどの遊びが好きな場合は、身体接触遊びを取り入れます。例えば、毛布やブランケットを用意して子どもを包んであげて、ブーランブーランと揺らします。子どもは楽しくて喜ぶでしょうが、子どもを「喜ばせてあげた、笑わせた」で終わりにしてはいけません。これを機械的な相互作用(キャッチボールのように)にしてしまうことがポイントです。
例えば、「ブーラン、ブーラン」と言いながら10秒間揺らし続けます。10秒経ったらピタッと揺らすのを止め、次に揺らすまでの空白の時間を設けます。子どもはもっと揺らしてよ!と期待しますが、この時間帯の大人は完全に一時停止したかのように顔色を変えず、言葉も出さずに、ただ静かに子どもの顔をジッと見るだけにします。その静寂の中、子どもから「アー」という声が出たら、「アー」と逆模倣します。つまり、子どもが発声したくなるような場面や状況を作るのです。こういう環境づくりを【確立操作】といいますが、このように新しい行動が出そうな場面を作るように心がけていきます。
また、タカイタカイであれば、5秒やった後、床に降ろしてピタッと止めてみます。タカイタカイが好きな子どもなら、「もっとやって」という感じの何らかの意思表示をするかもしれません。これだけではまだ次のタカイタカイをやらずにちょっと待ち、数秒待って子どもが「アー」等と言ったら、ここで「アー」と逆模倣して、「上手上手!」と褒めつつタカイタカイをします。そして、5秒ほど喜ばせてあげたら、またピタッと止めるようにします。このように、標的行動が出るまで、なるべくそれが出やすい状況にした上で少し待つ方法を【タイムディレイ法】といいます。これを繰り返していくと、15秒待たなければ声を出さなかった子どもが、10秒、5秒と短い間隔で発声するようになります。
こんなふうにして、子どもの好きな身体接触遊びや、テンションが上がる遊びをして、その中でちょっとだけ動きを止めて短い時間待ってみるのです。まずは遊んで笑わせて盛り上げ、遊びが盛り上がったら終わりにしないで、盛り上げておきながら一時停止して様子を見るのがポイントです。ここで子どもの「あれ?もっとやってよ」という要求を引き出せるようになれば、子どもがもっと伝えたい!という気持ちにつながります。
そして、「言葉の理解力が高まり」、「発声する機会が多くなり」、「真似する力が育ち」、「人に働きかける行動が見られる」ようになってくれば、話せる言葉は自ずと増えていきます。
会話は【環境】から生まれます。
語彙が増えてきたということは、ことばのデータベース的なものが増えてきたということです。一つひとつの物の名前は知っているけれど、それをコミュニケーションに活かせていない場合があります。会話へとつなげていくためには、【環境】が大きくかかわっています。
行動分析学では【マンド】という要求言語のコミュニケーションがあります。このマンドが出るかどうかというのは、ただ待っていてもなかなか出るものではありません。大事なのは【要求不足事態】、つまり要求不足の場面を作るということです。自分の力で要求を叶えることのできる子どもは、覚えている言葉を使う必要がないのです。例えば、のどが渇いたときに、自分で冷蔵庫を開けて飲み物を取り出して飲める子どもは、「お茶、ちょうだい。」と言う必要がありません。おもちゃを部屋に出しっぱなしにしていれば、大人に要求しなくても自分で好きなおもちゃを取り出して遊ぶことができます。つまり、覚えている語彙を使う必要がないわけです。
すでに獲得している語彙をコミュニケーションとして使用するための技法はいくつか開発されています。
一つは、おもちゃの一部分を、ある日突然隠してしまう方法【機会利用型指導法】です。例えば、いつもおもちゃ箱に入っていて、自由に出し入れできていたプラレールのレールだけが手の届かないところにあり、子どもにはそれが見えるけど取れないという状況を作ってみます。こうすると子どもは、昨日までできていたことをするために、「プラレール」「あれとって」等と要求しなければならなくなります。
そこで、説明したような状況を作るために、「キャンペーン」という形で始めます。キャンペーンを開始する日からは、「発語して要求しなければもらえませんよ。」という場面を設定し、実行するのです。環境が満たされすぎているとコミュニケーションとしての言葉が育ちにくいので、キャンペーン中は環境をハングリーな状態にすることが大切です。
もう一つは、【タクト】と呼ばれるコミュニケーションがあります。タクトは要求ではなく、「気の利いたコミュニケーション」と言えばわかりやすいかもしれません。「ハトが飛んでるよ、ママ。」「あ、本当だね~。」というふうに、子どもが周囲に何かを伝達して会話のやり取りを楽しむものです。こういったやりとりは、ちょっとした【異変】が起こることにより引き出されやすくなります。
例えば、家に帰ってきて、あるはずのないものがあるというような状況があったとします。「あれ?こんな所に牛が!」みたいな感じです。いつもそこに牛がいれば、こんな言葉は言わないのですが、珍しいものがあるときにはこんな言葉が出やすくなるのです。例えば、ママからバナナが生えていたら、「ママ、バナナ!」と言ったり、ママのポケットから鳩が出てきたら「あっ、ハト!」と言ったりするでしょう。「あれ?いつもと違うよね・・・?」ということを子どもに気づかせるようにすると、タクトが出やすくなります。
また、【タクト】を出す環境を作るために、カードや絵本を使う場面がありますが、決まりきったやりとりはできるだけ避けるべきです。例えば、「これなぁに?」と聞いて、子どもが「象」とか「パンダ」と答えるステレオタイプなやりとりのことです。「問われて答える」というのも会話ではありますが、できるだけこのような形でパターン化はしない方がよいのです。
というのは、このような段階になったら、「これなぁに?」「象さん」「へぇぇぇ」と、次々と会話を展開する方がいいからです。親子連れの象であれば、「これなんだろう?」「赤ちゃん」「そうだね」というような感じでステレオタイプにしないことが大切です。逆に子どもが「これなぁに?」とお母さんに問いかけるようにして、お母さんが「象さんよ」と答えるようにしてもいいでしょう。絵本の読み聞かせをして、子どもが覚えてきたら、他の家族に本を読んで聞かせるようにし、「これなぁに?何してるの?」等と言うようになったら、獲得した語彙をコミュニケーションとして使う頻度が増えていきます。
単語を増やすために使われているカードや絵本のような伝統的なものを、もう少し誘導的に使い、豊かな展開のある会話へと進めていくことが大切です。
結局、会話と言うのは普通の言葉を媒介としたやりとりなので、最初にネタがないとやりにくいものです。ネタさえあれば、それをもとにして問いかけたりできるようになっていくわけですから、身近にあるカードや絵本など、様々な材料を用いて会話を展開していくと効果的です。
勝ちにこだわりがある子どもは、相手の気持ちを読み取ることや、自分自身をコントロールする力や気持ちを切り替える力が苦手なことがあります。そのため、勝ち負けのあるゲームで不利になると途中でゲームのルールを勝手に変えてしまったり、負けてしまうと感情をコントロールできずに感情的になったりしてしまうこともあります。
相手の気持ちを読み取ることや、自分自身をコントロールする力や気持ちを切り替える力に着目して、以下のような場面を設定してから勝ち負けのある遊びを始めます。
①ルール、勝ち負けがある事をあらかじめ伝える。
どんなルールのゲームなのか、勝ち負けがあるゲームなのかを事前に伝えることで、見通しを持つことが出来ます。
また、事前に伝えておくことで、子ども自身が気持ちの折り合いをつける準備をすることができます。
②気持ちの切り替え方のお手本を見せる【モデリング】、対処方法を一緒に考える。
ゲームに負けてしまった時に、「くやしかった~、でも次は頑張るぞ!」「負けちゃったけど、楽しかったからまぁいっか。」といったように前向きな表現のお手本を見せます。
また、気持ちの温度計を用いて視覚的にわかりやすいようにし、気持ちが曇ってしまった時「上の図の4と5」の対処方法をあらかじめ話し合い、実際に対処方法をできた場合には即座に褒める等して強化します。
③他者への声かけを行い、気持ちを考える。
自分の事となると割り切ることが難しくても、声に出して相手に伝えていくうちに、自分が同じ立場になった際にその言葉や気持ちが浮かんできます。
ゲーム終了後に自分の気持ちをカード等を用いて相手に伝えたり、逆に相手の気持ちをきいて知る時間を設け、それを積み重ねていきます。
①~③を繰り返し、友だちを意識して遊ぶことや、自分で気持ちをコントロールする体験を積み重ね、「勝ち負けへのこだわり」に対する支援をしていくことが大切です。
「自信がない」、「消極的」というのは「性格」や「特徴」の1つと思われがちですが、実は対処不可能な経験を繰り返し体験する環境で過ごした中で学習したことによりつくられたものです。決してその子の「性格」や「特徴」ではありません。
小さなことでもよいので、「できた!」「やれた!」という成功体験を積み重ねることは、自分に自信を持たせたり、新しいチャレンジに挑戦する勇気を与えたりする効果があるので、自信を持つことにつなげるために成功体験を積み重ねていこう!という方針で考えていきますが、留意しなければならないことがあります。
それは【学習を促進する3原則】です。
難易度の高い目標はなかなか達成しにくく、挫折したり圧倒されたりしてしまうことも少なくありません。
どんな子でも苦手な課題でさえ楽しむ方法があり、みんなと同じ課題ではなく、別の課題があったっていいんです。
【学習を促進する3原則】を踏まえた上で成功体験を積み重ねていくということを留意し、スモールステップの原理を用いつつ、その子ができるレベル、楽しい結末になるように設定にして、その子のペースに合わせたプログラムを構築、実践します。
トイレトレーニングを例に挙げると、トイレでの排泄が難しかった子に対して、標的行動(トイレで排泄する)を【課題分析】(1.トイレへ直行する、2.トイレのドアを開ける、3.便座の蓋を上げる、4.ズボンとパンツを脱ぐ、5.便座に座る・・・、といったように行動をより細かく、スモールステップに分解していくことをいいます。)】、一つひとつのステップに介入して即座に褒める、シールを貼る【トークンエコノミー】等の対応を実践【シェイピング】することで、トイレで排泄する回数が増え、「見て!できたよ!」と笑顔で発言する姿も見られました。
自宅では間食させない、食事中に他に注意が向かないようにする(テレビを消す、おもちゃを片づける等)という工夫も必要ですが、原則「ごちそうさま」でさげてしまいましょう。
2,3口だけ食べてどこかに行こうとしたら、「あっ、ごちそうさまするの?はい、ごちそうさましましょう!」と言って、子どもと一緒に手を合わせて「ごちそうさまでした!」と言って、食事をさげてしまうのです。
さげるというのは、置いておくということではなくて、戻ってきてもご飯はもうおしまいということです。
2,3口だけ食べてどこかに行き、戻ってきたときには食べ物がなくなっていても、それだけで餓死することはありません。5~6時間後にはまた次の食事の機会があり、少ししか食べなかったままの状態にしておくことで、次の食事をガツガツ食べたいという動機が高くなります。「ごちそうさまでした」が食事の終わりの合図、ということを伝えることが大切なのです。
食事に限りませんが、「始まりと終わりをきっちり教える」ということはとても大切です。つまり、このような食べ方をしているのをやめさせるためには、大人が子どもに「座って食べることの重要性」を教えるということではありません。「食べ終わったのね?ごちそうさまするのね?」と1回だけ声をかけ、それでも帰ってこないのであれば、「ごちそうさま!」と一緒に言ってさげてしまえばいいわけです。子どもがあわてて「まだ食べる!」という状態になれば、最初の状態からすれば大幅に改善していきます。
「あっ、自分がやっちゃったことでご飯さげられちゃった・・・。やらなければよかった・・・。」というふうに、【後悔】するということを体験するのも、発達の上で非常に大切です。
人は自分のやったことに対して、痛みや傷を負うことは自然なことです。にもかかわらず、子どもが痛みを感じないように、傷を負わないように、あるいは目先のことで損をしないようにという大人の想いが強くなればなるほど、うまくいかなくなる可能性が高くなります。
こういう行動に対して絶対にやってはいけない対応があります。
それは、その場しのぎの解決
(【従属】や【取引】)
を優先することです。
子どもは自分の要求が制限されたとき、激しいかんしゃくを起こす場合があります。「その行動を今すぐやめさせたい」と思うならば、大人が子どもの要求に従う(従属)と、確かに止まります。また、要求には従えないけど、「じゃぁこれをあげるから」と言って、別の何かを渡しても(取引)おさまるかもしれません。でも、こういう従属や取引は絶対にやらない方がいいのです。
まず、なぜ泣きわめくという行動を起こすのか、それについて知る必要があります。
行動にはいわゆる【動機づけ】と呼ばれるものがあり、以下の4つに分類できます。
これを「ABCフレーム」という考え方の枠組みを用いて、人間の行動を分析します。
ABCフレームの「A」はAntecedent = 直前条件(行動が起こるきっかけとなる状況)、「B」はBehavior = 行動、「C」はConsequence
= 直後条件(行動による結果)という意味です。
たとえば、スーパーのお菓子売り場で子どもが母親に「お菓子が欲しい」と泣きわめき、母親はやむを得ずお菓子を買う、という場面があったとします。これをABCフレームに当てはめると、お菓子がない(A)、大声で泣きわめく(B)、お菓子が手に入る(C)という流れになります。
行動(B)と結果(C)にはつながりがあり、この例では泣きわめくことでお菓子を入手するという結果に至りました。そのため、この子どもはそれ以降もお菓子を手に入れるために、泣きわめくという行動が「強化」される可能性が高まります。
この子にとって、「お菓子」は好きなもの、これを【好子】と呼び、お菓子が手に入った(好子が出現した)ことから【好子出現の強化】と言います。また、それとは逆にプレッシャーや苦手なものを指す【嫌子】と呼ばれるものもあり、この好子・嫌子は人それぞれです。
泣きわめく、と言う行動にも、状況(直前条件)によってその機能が異なります。
①注目が得られる
お母さんが忙しそうに家事をしている時に、泣きわめいたら、お母さんが「どうしたの!?」と接近してきてくれた。さらにあれこれ言ってみたら、お母さんが「でもさ・・・」「○○でしょ!」「だから・・・」などといろいろと話してくれた。
以後、同じような状況で泣きわめくいうことが増えた。
これは泣きわめくことで好子(母親の注目)が出現したことから、
【好子出現の強化】と呼びます。
②ものや活動が得られる
お母さんが使っているスマホを貸してほしい。それを使ってゲームで遊びたい。動画が観たい。泣きわめいてお母さんにせがんだら、最終的にはスマホを貸してくれた。以後、スマホを手にしたいときは、頻繁に泣きわめくようになった。
これは泣きわめくことで好子(スマホ)が出現したことから、
【好子出現の強化】と呼びます。
③逃避・回避できる
歯医者に行く時間が近づくにつれ、泣きわめく。泣きわめいてしょうがないので、歯医者に行く日を別の日に変更した。それ以降、同じような場面で、泣きわめくことが増加した。
これは泣きわめくことで嫌子(歯医者に行く不安)が消えたことから、
【嫌子消失の強化】と呼びます。
④感覚が得られる
お母さんが不在中でも、突然さめざめと泣きだす。ほっておいても、相手にしても、おもちゃを与えても、急に思い出したように泣き出す。まるで、泣いていることによる身体変化(涙が出る、横隔膜がヒクヒク動く等)を得るために繰り返しているようにも思える。
これは泣きわめくことで好子(泣いている感覚)が出現したことから、
【好子出現の強化】と呼びます。
人間が行動をする「好子」「嫌子」から生まれるメリットの法則はこの4つのどれかに必ずあてはまり、このように行動の直前と直後のつながりを【行動随伴性】と呼びます。
※行動の機能は4つしかありませんが、以下のように複数の機能が同時に1つの行動を強化している場面も多々あります。
繰り返し強化された行動は、コンスタントに出現するので、それは【習慣】と呼ばれます。習慣が固着してくると、人はそこに「性格」「性質」「キャラクター」というように、もともと生まれつき持っているものが行動の原因かのように錯覚してしまいますが、こうした日常の言動や習慣は、ほとんどが学習性(環境との相互作用で作られたもの)と考えられ、【行動随伴性】から行動の原因を読み解くことで、行動している本人ですら気づいていない行動の本当の機能が見えてきます。
子どもは、大人の期待に反することをしてでも、それだけ特定の対象を得ようと必死になっているという事実があります。これは悪いことではなく、私たち大人でも何か目的のために特定の行動を繰り返します。たとえば、貯金を少しずつ貯めて旅行に行くなど、目的を果たすための方法がありますが、その方法が【適切かどうか】が問われているだけです。
子どもというのは、良くも悪くも正直です。方法の適切さというよりも、欲する結果が得られたかどうか、が何よりも優先されます。
「この子はこういうことが今の動機になっているんだ」
「口先ではああ言っているけど、本当のこころは違うんだな。」
と、まず行動の機能を知ることが非常に重要なのです。
この話を聞くと、じゃぁ泣きわめくという行動を強化しないようにすればいいんだ!(泣きわめくという行動に対して反応しない等【消去】)と考え、それで終わってしまいがちですが、もう一つやらなければならないことがあります。
それは【代替行動】(本来の期待される行動とは違うけれども、望ましい行動に近い別の行動のこと)に価値を見いだし、その行動に対して褒める等して強化【他行動分化強化】していくことです。
①注目が得られる、を例にします。
「ママ、手伝おうか?」と言うお手伝いの申し出までとはいきませんが、泣いてばかりではなく、「ねぇママ。」と泣かずに声をかける行動に価値を見いだし、その行動を増やすことにするのです。代替行動をしても、子どもにとっては同じ好ましい結果が得られるのがポイントです。
この場面で、例えば泣かずに「ねぇママ」と声をかけてきたのに、余裕がなかったお母さんが、「ちょっとあっちで待ってなさい!」と目線も合わせずにどこかに行ってしまうような対応をしたとします。そうすると、子どもは結局泣きわめくことでしか注目が得られないと学習し、その行動を継続します。お母さんは泣きわめくのを減らしたいと願っているし、適切な行動が増えてほしいと願っているのに、結果として減らしたいはずの行動を増やすことになってしまうのです。
代替行動というものに価値を見いだせれば、バタバタしている時でも、「なに?どうしたの?」という注目を与えてあげることもできます。適切な行動・代替行動と、減らしたい行動(泣きわめく等)は両立することはできないので、適切な行動・代替行動が増えれば増えるほど、減らしたい行動は相対的に減っていきます。つまり、【消去】と【他行動分化強化】は必ずセットで行う必要があるのです。
感情的に対応(叱る等)してしまうと、それはむしろ逆効果になるので、
1.泣きわめくという行動の機能を知り、分析する。
2.その行動を強化しないように対応する。
3.別の許せる行動(代替行動)とは何かを考え、その行動に価値を見出し、強化していく。
という対応が効果的です。