「こばとっこくらぶ」のホームページをご覧いただきまして、誠にありがとうございます。
長文ではございますが、しばしお付き合いいただけると幸甚です。
なぜ幼児期のお子さま
(児童発達支援)だけを専門に療育しているのか?
はじめまして。
児童発達支援管理責任者として勤務している公認心理士・社会福祉士です。
私は大学院で発達心理学・行動分析学を専修し、その知識を活かして、療育機関、発達障がい専門の学習塾、不登校児支援団体、小学校の特別支援学級といった現場で、様々な年齢の発達に凸凹があるお子さま、そのご家族の方、お子さまにかかわる先生や関係機関の方とかかわり、支援を行ってきました。
その中で強く実感したことがあります。
それは【早期療育(介入)の重要さ】です。
人間には臨界期と呼ばれる時期が存在します。「人間の脳には学習するのに適切な時期があり、その時期を過ぎると学習が非常に困難になってしまう」という考え方です。幼児における臨界期とは、子どもを取り巻く環境に応じて、脳の中で神経回路が集中的に作られたり、その回路の組み換えが活発になったりする、最も「感性豊かな時期」を指します。
臨界期は、一生に一度しかありません。この時期に様々な刺激を受けることは、その後の発達に大きな影響を与えるため、幼児期の家庭環境はもちろん、保育園や幼稚園で過ごす時間もとても大切になってきます。
特に社会性や運動能力の育ちはおおむね10歳までに決まりますので、それまでにできるだけ高めてあげることが重要になります。
生後から1歳までに育った脳の神経ネットワークは、1歳以降およそ10歳頃までに一旦整理が行われ(【シナプスの刈り込み】と言います。)、この活動が行われることで育っていくのです。
つまり、「社会性や運動能力を育むためには、10歳までに適切な取り組みを行うこと」が何より重要なポイントとなります。
無目的にただ遊ばせるのではなく、一人ひとり、それぞれの課題や現状を適切に評価した上で、その子に合った取り組みを選択することが大切だと言うことです。
逆に言うと、「その子に合った取り組みを行っていないなら、時間だけが過ぎていく」ことになり、それに気がつかないとあっという間に10歳を迎え、その貴重な時期はもう二度と戻ってこないのです。
児童発達支援こばとっこくらぶが幼児の療育を専門としているのは、こういった脳の発達を大切にしているからです。
「幼児期における取り組みが、我が子の人生を変える」
と言っても過言ではありません。
余談になりますが、私はこれを【粘土】のようなもの、と捉えています。
開封したて(幼児期)の粘土は形を自由に変えることができますが、しばらく時間が経つと(一定の年齢に達すると)粘土は固まり、形を変えることは困難になります。
仮に凸凹の形のまま固まってしまった場合、その時になっていざ形を変えようと介入しようとしても、既に難易度が非常に高くなっている可能性があり、それをさまざまな現場で実際に体験してきました。
(年齢が一定の年齢を過ぎると効果的な介入方法の選択肢が減っていき、場合によっては荒療治しないといけないこともあります。)
昨今、小学校に上がるタイミングで新しい環境に適応できず、さまざまな困りごとを抱えてしまう「小1プロブレム」という言葉も話題になってきています。
実際に、小学校低~中学年の頃から「学校に通えない」といった社会生活上の課題に関するご相談を数多く受けてきました。そしてそのほとんどが、幼児期から自己肯定感がずっと低いお子さまだったのです。
このことからも「幼児期に自己肯定感をどれだけ高めてあげられるかは、小学校以降の人生に大きく関係する」と言えます。
ノーベル経済学賞を受賞したヘックマン教授らも示している通り、介入を始める時期が早ければ早いほど効果的で、子どもの潜在的な能力を引き出し、将来の学習や社会生活における困難を最小限に抑えることができるとされています。
※人的資本・・・療育を含む教育を経済活動として捉えると、将来に向けた「投資」として解釈できるという考え方
だからこそ、幼児期のお子さまへの療育【早期療育(介入)】を通して、子どもの発達の状態や特性を知ることで将来の自立と社会参加へつなげ、子どもたちが自信をもって将来に向かって羽ばたけるよう、成長していくステップをご家族の方とともに歩みたいと考えております。
療育の目的は「子どもを標準化させる」ことではない。
療育に対して、「できないことをできるようにする。」「苦手なことを克服する。」「マイナスな部分にフォーカスして支援し、発達の遅れを取り戻していく。」というイメージをお持ちになっている方もいると思います。
特に発達検査を受けると、平均点に対して子どもがどこにいるのか、といったことが問題になり、「解決するべき課題」になっていきます。もらうアドバイスも「ここをこうしたら改善できる」といった、「マイナスを平均点にする方法」が多いです。
なぜ「できないことを指摘して、それを修正して標準化させる」ということが注目されるのでしょうか。
それは、「標準的なことが正しいこと」という認識が一般的だからです。
しかし、こういう考えをもとに行う療育は間違っています。
「子どもは、苦手なことを指摘されたり、苦手な課題を克服するために生まれてきたのではない」からです。
例えば、
「この子(年長)はお箸が上手に使えない。それだと将来困るだろうから、お箸をちゃんと使えるようにさせないといけない。」
という考えで、お箸の練習をひたすら繰り返すやり方を選択したとします。
こういう進め方では、困りごとは解決しません。
本来は、お箸を上手に使えないという事実があった場合、どこに原因があるのか?をセットで考える必要があります。
「視覚操作が苦手で、お手本を見せられても指先をどう動かせばよいのかわからない」とか「まだボディイメージ(身体図式)の認識が曖昧で、思うように手足を動かす力が弱い」など、理由が必ずあります。
まずは子どもの得意な部分を認め、安心できる環境を提示し、その中で自分に自信を持てる取り組みをスモールステップを意識して行う(下図の左のようなイメージ)という流れが大事です。それらが整ってからはじめて「苦手なことにもチャレンジしてみよう」という気持ちが湧いてきます。
そういった基礎固めを行わず、いきなり苦手なことを繰り返しさせる、という方法を取ると、下図の右のようなイメージになってしまい、子どもは自信ややる気を失い、自己肯定感も下がってしまいます。
言葉に関しても同じです。言葉に遅れがあるからと言って、絵カードを見せて「これは、みかんだよ。みかんって言ってみて!」という練習を何時間もしたところで、意味のある言葉として覚えることはできません。
なぜなら、まずみかんというものを意識の中で捉えていること、そしてみかんに興味関心をもっていること、大人の言う「みかん」という言葉と、目の前にあるオレンジで丸いものが一致していること、これらが言葉が出る前の基礎となります。
つまり、育ちの基礎が出来ていないと、言葉も体も認知も発達しないのです。
この【基礎を作り、数多の可能性を引き出していく】のが療育です。
幼児期の発達について
運動の発達を例えにして説明します。
赤ちゃんがいて、お母さんがふと気づくと、1人でお座りしている。
こういった場面は見たことがあると思います。
では、なぜ赤ちゃんは教えてもいないのに、1人でお座りしたのでしょうか?
それは、「お座りするための状況が整ったから、勝手にお座りした」のです。
お座りをするための状況とは、
「体幹筋が育っていること」
「首が座っていること」
「うつ伏せから腕の力と背筋力で体を持ち上げることができること」
「足を前に曲げてくること」
などです。
これらのことが揃えば、「お座りは自然にできる」ということです。
もちろん、ハイハイも、つかまり立ちも、その他のすべてのことが同じ機序です。
つまり、子どもは「できる状況になれば、勝手にし始める」のです。
反対に言うと、できないということは「できる状況が揃っていない」ということです。
さらに言うと、今子どもがしていることは、「子どもにとって、最大レベルのこと」なわけです。
言葉に関してもお座りと同じで、状況が整えば出てきます。言葉が出ないのは、「状況が整っていないから」に他なりません。
「単語は喋るけれど、二語文は喋らないんです。」
それは、二語文が出るための要素が揃っていないからです。
このように、状況が整っていない段階で「二語文を教える」ことをしても、子どもは適応できません。
つまり、こういった指導はうまくいかないのです。
幼児期の発達は、上から引っぱり上げるもの(トップダウン)ではなく、「底上げをしてあげること(ボトムアップ)」で促進していくことができます。
幼児期のお子さまに対しては、今の子どもの発達段階より難しい課題を繰り返し練習させるのではなく、「次の段階に行けない部分(理由)」を見つけ、「その部分を上手く導く、または環境を整える」という方法の方が良いのです。
事業所を選ぶポイント
これをお読みの方の中で、正しい評価がなされていないのに「できないことをできるようにする取り組み」をしている療育を受けている方、そして、交付された「個別支援計画」の内容に疑問をお持ちの方がおられるなら、その療育は「のれんに腕押し」となっている可能性があります。
ちなみに、こばとっこくらぶでは、初回のご利用から数回にかけて、言語面・運動面・認知面・記銘力など10領域の発達検査を実施・評価していますので、その結果を見れば「次の段階に行けない部分(理由)」が分かります。
そして、検査チャートにのっとって検査し、保育士もセラピスト同様、発達検査が実施できるスキルを学び、日々研鑽していますので、発達検査の結果が保育士・セラピストで異なることはありません。
誰が担当になっても、評価結果から導きだされた「今のお子さまに合った遊びプログラム」を実施しています。
幼児期は、人生の基礎を作る大切な時期です。
幼児期の小さな違いは、大きくなった時に、大きな違いに変わります。
だからこそ、児童発達支援事業所は慎重に、堅実にお探しになることをおすすめします。
親業(ペアレンティングスキル)
子育て中のお父さん、お母さんの中には、「子育ての正解がわからない」と悩んでいる方もいるのではないでしょうか。
昔からたくさんの医学書や育児雑誌があり、子育てについて書かれています。
最近ではインターネットやSNSを見ると子育ての情報が数多く載っているので、参考にしている方も多いと思いますが、賛否両論あったり、世間の風潮も影響したりして、何を参考・基準にしたらよいのかわからなくなることもあると思います。
例えば、「子どもは褒めて育てたほうがよい」と言う言葉はよく耳にすると思います。
確かにコントロール型(叱る、罰を与える等)の子育ては子どもの脳(前頭葉・後頭葉・側頭葉)の萎縮に影響を及ぼす一方で、自律性促し型(共感する、褒める等)の子育ては子どもの脳(前頭前野)の機能を高め、子どもの発達に良い影響を及ぼすことがわかっているのですが、気を付けなければならないポイントがあり、それを実践しないと逆効果になってしまうことがあります。
「子どもは褒めて育てたほうがよい」いう話も含め、子育てにおいて大切なこと。
こういう話を一例とした、ご家族の方に【親業(ペアレンティングスキル)】を高める支援も行っていますので、ご興味ある方は当施設までご連絡ください。